混雑・待ち時間に関する施設アンケート
今年は3年ぶりに規制なしのゴールデンウィークとなり、ようやくおでかけ市場にも活気が戻ってきました。施設にとっては嬉しい反面、施設内の混雑や待ち時間による満足度の低下といった課題も生じているのではないでしょうか。特にwithコロナの時代において、“密”が発生しがちな「混雑問題」は、今まで以上に気にしなくてはならないポイントと言えます。そこで今回は、「混雑・待ち時間」について全国102のおでかけ施設に協力していただいたアンケートの結果を紹介します。
アンケート対象施設の規模区分
まず、今回のアンケート対象となった102施設の施設規模(年間来場者数)について。
※コロナウイルスの影響を受けていない時期(2019年)の来場人数

今回のアンケート対象となった施設は、年間来場者数50,000人以下の施設が52.9%。50,001人以上の施設が38.2%(分からない8.8%)となっています。以降のデータについては、上記の規模(年間来場者数)のおでかけ施設による回答をもとに算出しています。
混雑や待ち時間の発生状況
はじめに、施設内で混雑や待ち時間が発生する事があるかどうかについて尋ねてみました。

結果、約6割の施設が「ある」と回答。施設形態によって差異があるのかを調べるために、施設規模と施設ジャンルにわけて見てみます。(細分化しているため、1回答による比重が大きくなっています。)

施設規模で見てみると、年間来場者数1,000人未満の施設においては「混雑や待ち時間は発生しない」と回答した施設のほうが多く、1,000人以上の施設になると施設規模に関わらず「混雑や待ち時間が発生する」と回答した施設の方が多い結果となりました。各施設の敷地面積にもよりますが、当然多くのお客さんが来場される施設であればあるほど、混雑発生の確率は上がっています。

一方、ジャンル別で見た場合、大きく2つのパターンに分かれる結果に。ひとつは混雑や待ち時間が発生する施設の割合が多いジャンル、もうひとつは発生する施設と発生しない施設が半々のジャンル。
特に割合に差が開いたジャンルは「温泉・銭湯、宿泊施設」「動物園、サファリパーク、牧場、水族館などの生き物関連」「レストラン・カフェ、ショップ、商業施設」「屋内遊園地」「プール、スキー場、スケート場などのシーズンレジャー関連」でした。これらは施設規模に関わらず、人が集まる時期や季節、時間帯に偏りのあるジャンルが多いように感じます。
混雑・待ち時間が発生する時期・時間帯
つぎに混雑や待ち時間が発生する時間帯について尋ねてみました。

もっとも多かったのが「GWやお盆などの大型連休の午後」で61.5%、次点に「GWやお盆などの大型連休の午前」「土日祝日の午後」が続く結果に。
どうやら休日は午前より午後、平日は午後より午前に混雑する施設が多いようです。休日は朝から活発に動き、平日は学校が終わってから遊びに出かける、そんなイメージを持っていましたが、意外にも真逆の結果となりました。
よく混雑する場所
つぎに、施設の中でよく混雑する場所について尋ねました。

64.6%の施設が「受付」と回答。人気のアトラクションより、受付がもっとも混雑している施設が多いようです。確かに「受付」は施設に入場するすべてのお客さんが必ず通り、なんらかの手続きをする場所。受付窓口の個数が限られている施設も多いため、入場時間が重なった際に待ち時間が発生してしまう施設が多いのでしょう。
混雑時の待ち時間
では、もっとも混雑しているときの待ち時間はどの程度なのでしょうか。

「5~10分程度」「10~20分程度」「20~30分程度」の合計で半数以上を占める結果に。特に小さな子供連れの場合、10分程度の待ち時間でも満足度への影響は小さくないでしょう。親子をターゲットとする施設にとっては、待ち時間は特に大きな課題と言えそうです。
混雑・待ち時間を解消する工夫
混雑・待ち時間を解消するためにどのような施策・対策を実施しているのかをフリー回答で尋ねてみたところ、「整理券配布」「事前予約」「増員・増設・分担」「待機スペースの設置」など、多くの施設が様々な工夫をしているという事がわかりました。一部抜粋します。
- 【整理券配布】
- 待機列ができたら時間制の整理券を配布し、該当の時間にあらためて来ていただくようにしていた
- 混雑時は、入館整理券を発行している。正確な入退場の時間が把握できないため、番号順でのお呼び出しと同時に、公式HPやSNSでも発信して、離れていても確認出来るようにしている
- 番号札を配布して指定の時間に再来店してもらう
- 整理券の配布を行い、店内放送にて順次ご案内している
- 【事前予約】
- ウェブサイトで予約してもらう
- 予約を推奨し、一度に入場できる人数をコントロールする
- 事前予約を積極的にオススメします
- 【増員・増設・分担】
- 臨時の受付を増設して受付待ち時間が発生しないように努めています
- 受付とお渡しの担当を分けることによって効率化している
- 受付窓口と説明窓口を分けた。説明窓口を増やした
- 【待機スペースの設置】
- お待ちいただくスペースで記入所を設けて、待ちながらレジカードなどを記入していただく
- 休憩所を多く作り、待ち時間でも楽しく仲間やご家族と過ごしていただく
- 待機列スペース確保
待っているお客様向けの対策・対応
では、待っているお客様向けの対策・対応はどうでしょうか。こちらもフリー回答で尋ねたところ、多くの施設がおこなっていたのが「待ち時間の有効活用」でした。親子向けの施設の場合、子どもに対しての配慮もされているようです。一部抜粋します。
- 【受付記入】
- 先に受付用紙へのご記入をお願いしています
- 待機時間中に、受付申込書を記入してもらっている
- 先に受付名簿などの資料を渡して、ご記入いただく
- 【子どもへの配慮】
- 映えスポットで写真撮影、スポンジ刀を渡して遊んでもらう。絵本を渡す
- 待つのに飽きてしまった小さなお子様には、館内に置いてあるおもちゃや絵本をおすすめし、なるべく退屈な時間を作らないよう工夫している
- 受付前廊下に子供向けの本や、タブレット(常時自館のYouTube動画再生)を設置
待ち時間が発生しない理由
一方、待ち時間が発生しない(していない)と回答した施設はどのように対策して対応しているのでしょうか。

「完全予約制で混雑しないように来場者数を調整している」「大々的に集客活動をしていない」と回答した施設がそれぞれ3割。
完全予約制はお客様の混雑を避け、待ち時間の発生を完全に防ぐことができる上、コロナ禍での対応や入場人数の把握もしやすく、お客様にとっても施設にとっても多くのメリットがあるように思います。
受付や会計時の混雑緩和施策
続いて、受付や会計時の混雑緩和施策を実施しているかどうかについて尋ねてみました。

4割の施設が「電子マネー等のキャッシュレス決済利用」で対応し、混雑しないよう工夫しているとの事。以前、「おでかけ施設のキャッシュレス化に関するユーザーアンケート」でも紹介したように、キャッシュレス決済を希望する親も多くいます。ユーザーは混雑緩和の他にも多くのメリットを感じているようなので、まだ対応されていない施設は改めて対応を検討されてみてはいかがでしょうか。
飲食提供時の混雑緩和施策
では、飲食提供時の施策についてはどうでしょうか。

「調理時間の短いものをメインにして提供」したり「品数を絞り、調理がスムーズに進められるようにする」といったように、多くの施設がメニューを工夫する事で混雑対策をおこなっているようです。
スタッフを増やすとなると人件費や採用費がかかったり、予約制にするとシステム導入が必要になりコストもかかります。一方、飲食メニューの変更は定期的に見直しをおこなっている施設も多いため、初手として対応しやすいのかもしれません。
お子様の年齢確認方法
さらに、受付時におこなうお子様の年齢確認の方法についても尋ねてみました。

年齢確認をおこなっている施設のほとんどが「自己申告のみで書面確認等はしていない」と回答。本人確認証を提示・確認するとなると、施設としても確認作業に時間や人手もかかります。お客様自身も、証明書類を持参していなかったり、子どもの個人情報を提示することに抵抗がある人もいるでしょう。前述の受付での混雑状況も鑑みてか、多くの施設はお客様を信用して自己申告していただくという形を取っているようです。
混雑・待ち時間に関する施設アンケートまとめ
最後に今回おこなった「混雑・待ち時間に関する施設アンケート」の結果をまとめます。
- 年間来場者数1,000人未満の施設においては混雑や待ち時間は発生しないと回答した施設の方が多い
- 年間来場者数1,000人以上の施設は、混雑や待ち時間が発生すると回答した施設の方が多い
- ジャンル別では施設規模に関わらず、人が集まる時期や季節、時間帯が決まっているジャンルに混雑・待ち時間が発生している施設が多い
- 休日は基本的に午前より午後、平日は午前のほうが混雑が発生する施設が多い
- よく混雑する場所は「受付」、もっとも混雑する時の待ち時間は「5~30分」の施設が多い
- 混雑解消は「整理券配布」「事前予約」「増員・増設・分担」「待機スペースの設置」で対応
- お客様の待ち時間は「受付記入」や「子ども向け遊具」などで対応
- 待ち時間が発生しない施設は「完全予約制」や「大々的に集客活動をしていない」施設が多い
- 受付・会計時の待ち時間は4割の施設が「電子マネー等のキャッシュレス決済利用」で工夫
- 飲食提供時の待ち時間は「調理時間の短いものをメインにする」「品数を絞る」等、メニューで工夫
- お子様の年齢確認方法は「自己申告のみで書面確認等はしていない」施設が6割
混雑や待ち時間の問題は、小さな子どもを持つ親にとってリピートするかどうかを決める重要なポイントのひとつと言えます。待ち時間を工夫し少しでも軽減する事は、ファミリー顧客のリピート来訪に大きく影響するのではないでしょうか。
今回ご紹介した調査結果が、少しでも貴施設の今後の施策の参考になれば幸いです。
調査方法/インターネットアンケート
調査地域/特に地域の限定はなし
調査対象/全国102のおでかけ施設
調査日程/2022年4月15日~4月26日