おでかけ施設の繁忙期・閑散期それぞれの対応に関する施設アンケート
多くのおでかけ施設において、集客の状況は常に一定ではなく、時期によってお客様が多く集まる繁忙期、逆にまばらになる閑散期があると思います。おそらく、繁忙期と閑散期ではおでかけ施設のスタッフ配置や広告戦略等に、少なからず差が出てくるのではないでしょうか。そこで今回は、アンケートに協力して頂いた全国99のおでかけ施設の回答から「繁忙期と閑散期それぞれの対応」について、アンケート結果を紹介させて頂きます。
アンケート対象施設の規模区分
まず、今回のアンケート対象となった99施設の施設規模(年間来場者数)について。

今回のアンケート対象となった施設は、年間来場者数50,000人以下の施設が58.6%。50,001人以上の施設が34.3%(分からない7.1%)となっています。以降のデータについては、上記の規模(年間来場者数)のおでかけ施設による回答をもとに算出しています。
閑散期と繁忙期の売上の差
はじめに、閑散期と繁忙期の売上差について。以下グラフは閑散期売上を基準とした繁忙期売上の上昇率を表しています。

閑散期に対して1~2倍に上昇する施設が全体の36.4%、2~3倍が13.1%、3倍以上が23.2%(わからないが27.3%)という結果に。
ちなみに、閑散期に比べて繁忙期に300%以上売上が上昇していると回答した施設のジャンルは以下の通り。

キャンプ場などのアウトドア施設は、どうしても気候による集客影響を受けやすい事から、繁忙期・閑散期の差が大きく表れています。一方、博物館、科学館など学び関連の屋内施設が上位に入っているのは意外でしたが、おそらく小学校の夏休み期間などに集中する事が影響していると思われます。
多くの場合、繁忙期は売上も大きい一方で、当然仕事量や忙しさも増している事でしょう。そこで、おでかけ施設における繁忙期と閑散期での運営方針・体制や集客戦略の差異について、もう少し詳しく掘り下げていきたいと思います。
繁忙期と閑散期の人材配置・採用
まず、繁忙期と閑散期の人材配置・採用についての差異、また差異がある場合、具体的にどのような対応をしているのかについて聞いてみました。

「差異はない」という回答が半数を占める一方、繁忙期にスタッフの数を増やしたり、勤務時間・勤務日数を増やすといった対応をしている施設も一定数以上ある事が分かります。対応として、繁忙期前に新たなスタッフを採用している施設が2割程度、既存スタッフの勤務時間を増やして対応している施設がおよそ4割となっています。
なお、短期スタッフの採用コストについて課題を抱えているのであれば、以前お話を聞いたクライミングランド・のぼのぼさんの「年間50万円の採用費削減に成功した採用手法・職場環境改善の施策事例」の事例を参考にしてみると良いかもしれません。
繁忙期と閑散期の広告出稿
続いて広告出稿について。

「繁忙期・閑散期ともに費用をかけた広告出稿はしていない」施設が63.6%、「繁忙期・閑散期問わず毎月同額の広告出稿をしている」施設が14.1%と、大半の施設が繁忙期と閑散期の広告出稿に「差異はない」と回答しました。
また、差異をつけている場合、閑散期ではなく繁忙期の予算を高く設定している施設の方が多いようです。閑散期の底上げというよりは、同じ広告予算をかけるのであれば効率の良い繁忙期に、といった戦略が読み取れます。
繁忙期と閑散期の割引・クーポン施策
では、割引やクーポンに関する施策についてはどうでしょうか。

こちらも広告出稿と同様、「割引・クーポン施策は実施していない」が42.4%、「年間を通して同一内容の割引。クーポンを実施している」が37.4%と8割の施設が繁忙期と閑散期の割引・クーポン施策に「差異はない」という結果でした。
ただ、広告出稿と違う点として、差異をつけている場合、繁忙期ではなく閑散期のほうにメリットの高い割引・クーポンを出している施設が多いようです。これは閑散期の集客施策として、少し割引率は高くなったとしてもユーザーに足を運んでもらった方が良いという判断によるものでしょう。つまり、広告出稿は繁忙期の集客戦略、割引・クーポンは閑散期の集客戦略としておこなっている施設が多いという事になります。
ここまでの結果では、繁忙期と閑散期に「差異はない」という施設が大半でしたが、「まったく同じ対応をしている」というわけではないようです。そこで、次に繁忙期と閑散期、それぞれで特に注力して取り組んでいる施策について調査してみました。
繁忙期・閑散期に特に注力している取り組み
繁忙期と閑散期に、それぞれ特に注力している取り組みについて尋ねてみました。

繁忙期・閑散期ともにもっとも多かったのが「リピーター集客の強化」と「新規集客の強化」でした。特に繁忙期の方にその傾向は顕著に表れています。
人が集まる=ユーザーにとってその施設に魅力を感じて遊びにいきたくなる時期と言え、その魅力を最大限にアピールし、もっと集客しようと考える施設が多いのかもしれません。繁忙期に広告出稿を増やす施設が多いことにも繋がる結果と言えるでしょう。
繁忙期と閑散期で大きく差が出たのが「人材採用」と「人材育成」でした。繁忙期は同程度の割合ですが、閑散期では「採用」より「育成」に大きく偏っており、業務に少し余裕が出る閑散期にじっくりとスタッフ育成に取り組む施設が多いようです。
なお、繁忙期、閑散期問わず、定常的に力を入れている取り組みが「SNSのフォロワー数の増加」に関する施策。SNSは現代においてもっとも力を入れるべき集客ツールのひとつ。集客状況に関わらず、常に注力すべき要素と考えている施設が多いようです。
具体的な取り組み
では、繁忙期・閑散期の取り組みについて、具体的にはどういった事をしているのでしょうか。フリーアンサーでの回答を一部抜粋してみます。
まずは繁忙期から。
- 【新規集客・リピート集客】
- 当日の利用者に後日使えるリピートチケットを配布し、次回の来店に繋げた
- リピーター集客の強化にて、アプリ会員になるとお得に遊べるクーポンやCPを実施
- 値引き率を高め、スタッフとのふれあいができる大会を増やして集客Upに繋げている
- 特別展の開催
- 【SNS強化】
- フォロー&リツイート、投稿でプレゼント
- sns上にコメントなどをお願いしている
- 【プロモーション活動の強化】
- スマホバナー広告での広範囲への告知強化、SNS配信強化
- メディアアプローチをはじめPR活動
- チラシ・ポスターの配布
繁忙期は積極的にユーザー向けの施策を行っている施設が多い印象です。
続いて、閑散期の具体的な取り組みについて。
- 【人材育成】
- 資格を持っている方を採用し即戦力且つ、人材育成に繋げた
- 派遣社員のPCスキルの向上などに時間を充てている
- コンプライアンス等時間がかかる研修を閑散期に行っている
- 緊急時の訓練等
- 【その他】
- 収蔵庫内の整理整頓の促進、未整理情報のデータベース化
- 体験キッドの見直し、レイアウトのやり直し
- 園内の整備・マイナーチェンジ・新企画の推進
閑散期には、繁忙期にはできない時間のかかる研修や業務の見直し・改善など内部の業務を行っている施設が多いようです。
繁忙期と閑散期の対応の差異についてのまとめ
今回は、おでかけ施設の繁忙期と閑散期の対応の差異についての施設アンケートの結果を紹介しました。以下、結果をまとめます。
- 繁忙期の売上は閑散期の1~2倍が36.4%、2~3倍が13.1%、3倍以上が23.2%
- 閑散期と繁忙期の人材配置・採用に「差異はない」施設が半数。ほか、繁忙期にスタッフの数を増やしたり、勤務時間・日数を増やしている
- 繁忙期に短期スタッフの採用活動をしている施設が20%
- 繁忙期と閑散期の広告出稿に「差異はない」施設が78%。差異がある場合、繁忙期の予算が高い施設が多い
- 繁忙期と閑散期の割引・クーポン施策に「差異はない」施設が約80%。差異がある場合、閑散期にメリットが高いものを出している施設が多い
- 繁忙期と閑散期に特に注力しているのが「新規集客の強化」と「リピーター集客の強化」
- 人材育成は閑散期に特に注力している施設が多く、時間のかかる研修に取り組んでいる
- 人材採用は繁忙期に特に注力している施設が多い
- SNSの強化は繁忙期・閑散期同程度に注力している
- 繁忙期にはユーザー向けの業務を、閑散期には内部向けの業務をおこなっている施設が多い
今回のアンケート結果を貴施設の今後の戦略検討や施策に少しでも役立てて頂けますと幸いです。
調査方法/インターネットアンケート
調査地域/特に地域の限定はなし
調査対象/全国99のおでかけ施設
調査日程/2021年10月15日~10月23日