年間50万円の採用費削減に成功した採用手法・職場環境改善の施策事例
おでかけ施設が抱える様々な課題に対して、施設さんが実際におこなった具体的な施策と成果について紹介させて頂く事例紹介。今回の事例は、屋内アスレチック施設「クライミング・ランド のぼのぼ」さんの「採用コスト・教育コストの削減」に関する事例となります。今後の貴施設の施策検討の参考にされてみてはいかがでしょうか。
【施設】今回の事例を紹介してくれたおでかけ施設

スポーツクライミング施設全体の設計・製作・施工・販売を長年おこなっている株式会社日本ディスカバリーが運営。色とりどりの30のアトラクションが並ぶ、北海道札幌市にある屋内アスレチック施設です。
子供から大人まで楽しめるアクティビティが盛りだくさんで、季節イベントでは宝探しやクイズ、仮装なども楽しむ事ができます。2021年7月からは、幼児でも楽しめる「キッズコーナー」を新たにオープン。
【状況】繁忙期シーズンの度に短期スタッフを採用・教育
Q:まず、今回の施策を実施されるまでの状況について教えてもらえますか?
まず、当施設は繁忙期と閑散期で来園者数の差が大きく、繁忙期は閑散期の3~4倍のお客様がいらっしゃいます。そのため、閑散期と繁忙期ではスタッフの数も大きく変わります。繁忙期に必要なスタッフ数を10とすると、閑散期に必要なスタッフ数はその6割ほど。繁忙期に合わせた人数を常駐にしてしまうと、閑散期はスタッフが多すぎてしまうため、閑散期に合わせた人数を常駐させ、繁忙期前に都度短期のスタッフを採用し、その期間が満了したら契約終了という形をとっていました。
【課題】毎シーズン、新規採用コストと教育コストが発生
Q:その状況の中で、何を一番の課題として捉えたのでしょうか?
当施設の繁忙期にあたる、春休み・GW・夏休み・冬休み等の長期休み前には毎回採用活動をおこなっていたので、少なくとも年に4回は短期スタッフの採用コストがかかっていました。
また、新しくスタッフを採用すれば、先輩スタッフは通常業務以外に新人スタッフへの教育も必要になり負担が増えます。さらに、教育にかかる時間を見越して1日の配置人数を増やす必要があるので、そういった教育コストも懸念していました。
【施策】繁忙期のみ出勤する長期スタッフとして採用・教育
Q:課題を解決するために実施された施策内容について詳細を教えてください。
それまでは夏休みであれば夏休みの短期スタッフとして採用し、夏休みが終わったら契約が終了となる契約形態をとっていましたが、繁忙期の度に出勤してくれる長期スタッフとしての採用活動を実施しました。
現在、繁忙期のみ出勤してくれるスタッフが4名います。繁忙期のみの出勤という事は、それ以外の期間は収入が得られません。そうなると「お金を稼ぐ」ではない、「ここで働きたい」と思う別の理由が必要になります。そこで、「ここで働きたい」と思うのはどういう場所なのか、どうしたらそういう場所にする事ができるのかを考え、実践していきました。
【工夫】「ここで働きたい」と感じるようモチベーションを上げる
Q:この施策を実施するにあたり、工夫したことはありますか?
前述した通り、スタッフの「ここで働きたい」と感じるモチベーションを担保するには「環境を整えること」が重要だと考えたので、まずは職場環境の見直しを重視しました。
1つ目は、それまでしていなかった朝礼・終礼を実施したり、日頃からのコミュニケーションを増やしたり、アイデア会議を開くなど、スタッフの生の声を聞く機会を増やしました。そのコミュニケーションの中から、今スタッフが感じている事や、仕事に対するモチベーションはどこにあるのかを探りました。
また、繁忙期終わりには、勤務の最後の1時間に「お茶会」という形でカジュアルな打ち上げを実施し、みんなで「ああだった」「こうだった」と話す場を設け、そこで出た内容をまとめてスタッフみんなに配り、スタッフ同士でも感じている事や考えている事を共有する機会を作りました。これをする事によって「仲間」という繋がりを大切にしたかったんです。
2つ目は勤務形態の見直しです。以前は、数時間勤務予定だったスタッフに出勤してもらっても、暇な時には1時間で帰ってもらう事もありました。でも、そんなところで「働きたい」なんて誰も思わないですよね。なので、毎月イベントを実施する事にして、暇な時でも帰さずにイベントの準備をしてもらうようにしました。
3つ目は、スタッフの負担を減らしたり、お客様の満足度を向上を狙った「のぼのぼチャレンジ」。スタッフの声から出てきた意見やアイデアを改善していく取り組みです。

シフト表やマニュアルの見直しのような細かなものから、設備や備品の入れ替えなどに至るまで、1年間で100個ほどの意見が溜まり、現在も継続して実施しています。こういった形で、「自分の意見で改善されていく」のを実感できる事が、モチベーションを担保する要因のひとつになっているのではないかと考えています。
【成果】年間50万円の採用費の削減と教育コスト軽減に成功
Q:この施策を実施したことによる、具体的な成果について教えてください。
短期スタッフとして採用していた頃は、バイト求人誌などに年間で50万円ほど使っていましたが、繁忙期のみの出勤をお願いする長期スタッフの採用に切り替えた事で、それがすべて削減されました。新人スタッフへの教育コストを考えるとそれ以上のコストカットになっています。現在はコストをかけた採用活動は実施しておらず、公式HPで募集ページを置いているのみです。

募集ページは、採用後のギャップをなくすため、現在のスタッフがどんな事をモチベーションに仕事しているのかを参考にしたキャッチコピーを使い、どんな職場なのか、どんな仕事内容なのか、どんなスケジュールでどんな事をするのかなど、しっかりとイメージが湧くような構成にしています。
その結果、スタッフみんなが生き生きと仕事をしてくれていると感じています。毎月実施しているイベント準備の際も、「こんなのはどうか」「これがいいんじゃないか」など、積極的にイベント内容や進行方法の改善を進めてくれ、お客様の満足度も上がっているのではないかと思います。
明確なリピート率は測れていないのですが、以前は1年に1~2回来場される方が多かったのですが、今年は月内でリピートされている方が多くいらっしゃいました。
【今後】改善された職場環境の維持&ニーズに合った施策検討
Q:この施策の成果を受けて、今後考えられている展開や打ち手は何かありますか?
スタッフの声を聞く、という事を継続して実施していきます。
直近ですと、今年の7月にキッズコーナーをオープンしました。当施設は安全のため小学生以上でないと遊べなかったのですが、お客様が話していた「未就学児の兄弟がいるとなかなか来られない」という声をスタッフが拾った事から生まれた施策です。現在では2割ほどのお客さまが幼児連れでいらっしゃるようになっています。
お客様に一番近いのは現場のスタッフです。お客様がふと漏らした声や様子を見て、それを経営側に気軽に伝えられる環境を持続していきたいと思っています。