コロナがおでかけ市場に与えた影響に関する施設アンケート
昨年からおでかけ市場に大打撃を与え続けているコロナ。ユーザーは1年以上不要不急の外出を制限され、おでかけ施設の収益にも大きな影響を与え続けています。そこで今回は、アンケートに協力して頂いた全国101のおでかけ施設の回答から、「コロナがおでかけ市場に与えた影響」についてのアンケート結果を紹介させて頂きます。
アンケート対象施設の規模区分
まず、今回のアンケート対象となった101施設の施設規模(年間来場者数)について。

今回のアンケート対象となった施設は、年間来場者数50,000人以下の施設が58%。50,001人以上の施設が35%(わからない7%)となっています。以降のデータについては、上記の規模(年間来場者数)のおでかけ施設による回答をもとに算出されています。
コロナによるおでかけ施設(売上)への影響
コロナ禍によって、おでかけ施設の売上にはどのくらいの影響があったのでしょうか。2021年1月から7月の売上が、通常期(2019年同時期)と比べてどの程度変化があったのか、おでかけ施設に聞いてみました。

まず、もっとも大きなレンジは「-51%以上」。売上が通常期の半分以下になってしまった施設がもっとも多いという結果に。逆に通常期よりも売上が上がった施設は全体のおよそ1割。当然ですが、コロナによって大半のおでかけ施設の売上は下がり、さらに6割の施設は30%以上の減少を余儀なくされているようです。
ちなみに、通常期よりも売上が上昇したおでかけ施設を見てみると、「アウトドア関連施設」「スポーツ関連施設」「体験施設」ジャンルで8割を占めていました。
通常期(2019年)との部門別売上影響比較
続いて、上記の売上影響を部門別で分けてみました。「入場料」「物販」「イベント」「飲食」それぞれに対してどの程度の影響があったのでしょうか。

やはりどの部門においても、基本的にマイナス影響がほとんど。すべての部門でもっとも多いのが「-51%以上」と、コロナによる影響が全部門に対して大きく表れている事が分かります。
唯一特徴的な動きを見せたのは、有料イベントによる売上。「-51%以上」と影響をもっとも受けているのも「有料イベント」ですが、「変動なし」がもっとも多いのも「有料イベント」でした。コロナ禍において、イベントが実施出来なければ大きなマイナスになりますが、逆に実施さえ出来れば売上への影響はありません。特に小規模イベントであれば、しっかり対策をおこないながらイベント実施する事も可能です。コロナ禍において、イベント実施をおこなった施設とおこなわなかった施設の差異が明確に表れる結果となりました。
コロナによるおでかけ施設(コスト)への影響
売上に対しては、コロナによる大きな影響(マイナス)がはっきりと表れていましたが、コスト面ではどうでしょうか?続いて、2021年の1月から7月のコストが通常期(2019年同時期)と比べ、どのくらいの変化があったのかを聞いてみました。

コロナによってコストが増えたと答えた施設はおよそ2割。逆にコストが減った施設は全体の6割(変動なしが2割)。コロナによる収益減に対して、多くの施設が必死にコスト削減をおこなった事が分かります。
通常期(2019年)との項目別コスト影響比較
コストにおいても「イベント運営費」「広告宣伝費」「設備管理費」「人件費」の4項目に分けて、それぞれの変化率を見てみます。

どの項目においても、もっとも多いのは「変動なし」。コストは変わらずに売上だけ大きく減少しているわけですから、おでかけ施設にとって今が本当に厳しい状況である事が分かります。
一方、コスト削減出来ている項目としては「イベント運営費」と「広告宣伝費」あたりが高めです。やはりイベント自体の実施を取りやめた事で運営費や設営費をカット。また、その宣伝もおこなわない為、その分のコストも削減出来ているといった状況なのでしょう。
逆に、コロナによりコストが増えたと答えた施設が多かった項目は「設備管理費」。ソーシャルディスタンスの確保や除菌設備の導入など、施設を開園するために最低限必要な設備対策の影響がこの辺りに表れているのではないでしょうか。
春休み・GW・夏休みへの影響度合い(対2019年)
2021年になってから既に「春休み」「GW(ゴールデンウィーク)」「夏休み」と、3つの大型連休がありました。それぞれどの程度、コロナによる売上への影響を受けたのか調べてみました。

21年になってから、常に自粛要請の状況が続いているせいか、「春休み」「GW」「夏休み」によって大きな差異はなく、すべての大型連休時期で同じようにマイナス影響を受けている施設が大半のようです。
春休み・GW・夏休みへの影響度合い(対2020年)
一方、同じくコロナ禍だった昨年(2020年)との比較ではどうなるのでしょうか。

昨年と比較すると、どの時期も「変動なし」が最多。昨年の厳しい状況が今年も続いている施設はかなり多いようです。また、昨年より悪化していると答えた施設もかなりいますが、逆に昨年よりは売上が回復していると答えている施設もおり、若干回復している施設の方が多いようです。
新型コロナウイルス感染症の支援金・給付金活用状況
このような状況の中、政府や自治体が様々な支援金や給付金の制度を作っています。もちろんおでかけ施設が活用できる制度も複数ありますが、どれだけの施設がそのような支援金や給付金制度を活用しているのでしょうか?

制度を「活用している(申請中含め)」施設は全体の55%。おそらく大半のおでかけ施設は制度の対象になると思いますので、正直もっと活用率が高いのかと思っていたのですが、思いのほか利用していない施設さんが多いです。
対象にならないのであれば仕方ないですが、制度自体を知らなかった、申請の手間や準備が大変だから、そんな施設さんはもっと積極的に活用した方が良いと思います。あとから「こんな支援金制度あったのか」なんて後悔してももったいないですから。
コロナ対策内容の昨年(2020年)との変化
コロナ禍もかれこれ1年以上続いていますが、おでかけ施設が実施するコロナ対策もこの1年で変化はあったのでしょうか。いくつかの項目に分け、昨年(2020年)との違いについて聞いてみました。

「定期消毒」「換気」「人数制限」すべての項目でもっとも多かった回答は「変わらない」でした。昨年からずっと変わらず対策を続けている施設さんが全体の半数ほど。
また、昨年よりもさらに「(対策内容を)強化した」と答えた施設さんが4割ほどいました。新たな変異株の出現や陽性者数の増加により、さらなる対策を実施している施設さんもかなり多いようです。
逆に、昨年より「緩和している」おでかけ施設が1割程度いた項目が「人数制限」。昨年は多くの施設が閉園対応をしていましたが、今年は人数制限をおこないながら開園されている施設も多いです。その辺の違いがデータに表れているのかもしれません。
ワクチン接種者への対応(検討)について
ワクチン接種が進むにつれ、各所で「新型コロナウイルス感染症予防接種証明書(ワクチンパスポート)」の話題を耳にする事も増えました。また、ワクチン接種者に対して特典等を打ち出す飲食店なども見かけるようになっています。そこで最後に、コロナワクチン接種者に対して、今後おでかけ施設で何らかのサービスや特典の実施を考えているかどうかについて聞いてみました。

既に実施に向けて準備をしている施設が2%。検討している施設は18%。併せて20%のおでかけ施設が接種者への特典を検討されているとの事です。逆に、特にそのような特典の実施意向はないと答えた施設は6割。どちらがどうという話ではありませんが、参考までに。
コロナがおでかけ市場に与えた影響に関するまとめ
- コロナにより大半のおでかけ施設の売上は減少。6割の施設が30%以上の大幅減少に
- 通常期より売上が上昇した施設は「アウトドア関連」「スポーツ関連」「体験施設」
- 「入場料」「物販」「イベント」「飲食」などの部門は関係なく全て大きくマイナスに
- コロナによりコストが増えた施設は2割。逆にコストが減った施設は全体の6割
- 特にコストが削減されている項目は「イベント運営費」と「広告宣伝費」
- コロナによりコストが増えた施設が多かった項目は「設備管理費」
- 「春休み」「GW」「夏休み」によってコロナによる影響度合いに大きな差はなし
- 昨年比では、どの時期の売上も「変動なし」が多い。回復している施設もそれなりに
- 政府や自治体の給付金・支援金制度を「活用している」施設は全体の55%
- コロナ対策内容は、昨年と比べて「変化なし」が半数。4割が「強化」している
- ワクチン接種者に対して、何らかのサービスや特典の実施を考えている施設は2割
という事で、今回は「コロナがおでかけ市場(施設)に与えた影響」に関するアンケート結果を紹介させて頂きました。今回のアンケート結果を貴施設の今後の戦略検討や施策に少しでも役立てて頂けますと幸いです。
調査方法/インターネットアンケート
調査地域/特に地域の限定はなし
調査対象/全国101のおでかけ施設
調査日程/2021年8月15日~8月23日