屋内施設における「ガチャガチャ機器導入」による客単価増加施策事例

おでかけ施設が抱える様々な課題に対して、施設さんが実際におこなった具体的な施策と成果について紹介させて頂く事例紹介。今回紹介させて頂く事例は、関東のとある屋内施設さんの「客単価増加」を狙った「ガチャガチャ機器導入」施策になります。今後の貴施設の施策検討の参考にされてみてはいかがでしょうか。

目次

施設:今回の事例を紹介してくれたおでかけ施設概要

状況:コロナ影響による集客激減と入場料収益の大幅低下

課題:客単価の増加=顧客満足度の向上

施策:ガチャガチャ機器を初めて導入

工夫:子供にケガをさせない事が何よりも重要

成果:物販部分の売上が150%に。伸びしろも期待

今後:こちらからお客さんに「気付き」を与えていく

学び:店舗の中と外での顧客ニーズの違い

【施設】今回の事例を紹介してくれたおでかけ施設概要

施設ジャンル:室内遊び場(キッズパーク)
施設エリア :関東
施設規模  :面積(約700坪)
主な顧客属性:ファミリー/幼児・小学生

【状況】コロナ影響による集客激減と入場料収益の大幅低下

Q:まず、今回の施策を実施されるまでの状況について教えてもらえますか?

通常1日200人程の来訪がありましたが、コロナ影響を受けそれが日によって1日数十人まで激減しました。2020年3月頃は8割減、7、8月は7割減、9月には昨対3割減まで回復したものの、11月には昨対4~5割減まで再度悪化してしまいました。

また、もともと全体収益のうち入場料のシェアが90%ほどあり、集客減による入場料収益への影響は非常に大きかったのですが、世の中の風潮的に「集客を促進する施策」はとても打ち出しにくい(積極的にお出かけしようと言いにくい)状況にありました。

【課題】客単価の増加=顧客満足度の向上

Q:その状況の中で、何を一番の課題として捉えたのでしょうか?

集客数を増やす施策が打てず入場料収益の回復が見込めない状態でしたので、(収益的には)お客さんひとり当たりの単価を上げる事が重要だと感じていました。

また、お客さんからすると積極的にお出かけする事に抵抗を感じてしまうような状況の中、それでもお店に来て頂けるお客さんに対して、より楽しんで頂く、より満足して頂く事に注力すべきだという想いがもともとありましたので、それが結果的に「客単価の増加」にも繋がると考え、まずは「客単価アップ」を課題として取り組む事にしました。

【施策】ガチャガチャ機器を初めて導入

Q:ガチャガチャ機器の導入に至る経緯について詳しく教えてください。

実は、前職がアミューズメント系だった事もあり、ガチャガチャ機器と今のお店(お客さん)の相性の良さや機器導入による収益増のイメージ(利用頻度や単価感等)は持っていました。そんな中、回復してきた集客に陰りが見え始めた昨年の11月頃に、ちょうどガチャガチャ機器導入の提案を受けまして、「やってみよう」と。

Q:提案があったとはいえ、最終的にガチャガチャを選ばれた理由はありますか?

お客さんに「物」を売るというより「体験」を提供したいという考えがありましたので、中のアイテムをただ買って貰うのではなく、つまみを自分でがちゃがちゃと回して商品がゴロゴロ落ちてくる、そして何が出てくるのか最後まで分からないワクワク感、あの感覚をお子様に体験してもらいたい、そんな私自身の想いは、ガチャガチャを選んだ理由のひとつと言えるかもしれません。

Q:ガチャガチャ機器の導入までの期間やコストはどのくらいかかりましたか?

商品自体の仕入れ値(6掛け程度)のみで、機器の導入コスト自体は無料でした。最近は初期費用(設置費用)はなく、仕入れ値のみのところも多いみたいです。また、導入までの期間についても、施策実施を決めてからすぐに設置して頂けました。

【工夫】子供にケガをさせない事が何よりも重要

Q:ガチャガチャ機器を導入するにあたり、工夫したポイントなどあれば教えてください。

まず、何よりも「お子様にケガをさせない事」が重要であると考えました。商品選び、設置場所など、とにかくそこを中心に。

・プラスチックのカプセルはNG

ガチャガチャの商品というと、一般的にプラスチックのカプセルに入ったものが多いと思いますが、うちは小さなお子様が遊ぶ場所なので、どうしてもお店の中でプラスチックのカプセルを投げてしまったり、踏んで転んでしまったり、危険が伴うと考えました。そこで、プラスチックのカプセルを使わない商品である事を絶対条件にさせてもらいました。結果、商品そのものがそのまま出てくる「スーパーボール」を選ばせて頂きました。

ガチャガチャ機器

・性別・年齢問わず興味を持つアイテム

「スーパーボール」を選んだのには、もうひとつ大きな理由があります。今回選んだ商品は「ジュエリーウォーターボール」という、見た目がキラキラしたとても可愛いアイテムで、小さなお子様から小学生、また男の子でも女の子でも欲しくなる商品です。少ない台数で数多くのお客さんのニーズを満たし、より多くのお客さんに満足して頂ける商品をチョイスしたのも工夫のひとつです。

・子供が遊ぶ場所には設置しない

また、設置場所についてですが、あえてお店の出口付近に置きました。もちろん全てのお客さんが通る導線という事もありますが、うちの場合どうしてもお子様が遊ぶエリアに置いてしまうとケガの誘発に繋がってしまいますし、遊びでテンションが上がっているお子様が機器に登ってしまったり倒れてしまう恐れもありますので。

・物販戦略との相乗効果

設置場所を出口付近にしたもうひとつの理由は、うちの物販戦略との相乗効果を狙った側面も。実は最近物販エリアの商品を増やし、キャラクターものなど少し高額の商品を増やしている傾向にあります。お子様はキャラクターアイテムが大好きですから欲しがるお子様も多いのですが、当然買ってもらえないお子様も大勢います。そんな中、少なからず不満を抱えたお子様が出口付近で200円のガチャガチャを見つけると「だったらこれやらせて」となり、親も「これならいいよ」に繋がるわけです。

・両替問題は設置場所で解決

ガチャガチャ機器の設置をするにあたり、ひとつ懸念としてあったのが「両替」でした。ガチャガチャは100円玉しか入れられませんので、小銭を持っていない場合、当然両替が必要になります。うちのお店の場合、受付(スタッフ常駐)のすぐ横が出口(ガチャガチャ設置場所)になっていますので、「小銭がない」となったお客様はすぐに受付にいるスタッフに両替を依頼する事が出来ます。今のところ親御さんが両替依頼をためらうようなケースも見受けられないので、そういった面でも設置場所を出口(受付の側)にした工夫は効いていると思います。

【成果】物販部分の売上が150%に。伸びしろも期待

Q:ガチャガチャ機器を導入した成果について、具体的に教えてもらえますか?

店内で遊び終わった8割近いお子様が「ガチャガチャをやりたい」と言ってくれます。その中の半数近いお客さんは実際にやってくれるので、お客さんのニーズにもフィットしており、満足度向上にもしっかり繋げられていると感じています。

ちなみに通常は1ヶ月程度で中の商品が無くなる事が多いらしいのですが、うちは2、3週間と倍近いスピードで無くなります(都度補充)ので、うちのお客さんとの相性はとても高いようです。

収益側面でも物販売上が150%まで増加しています。また、これから集客が回復してくればこの施策による成果も大きく伸びてくるでしょうし、12月に導入した2台目のガチャガチャもありますので、まだまだ伸びしろを感じて(期待して)います。

ちなみに、12月に導入した2台目のガチャガチャは、お店の外に設置しています。これにより、お店に入場されていないお客さんからの収益が新たに期待出来るようにもなりました。

Q:もともと想定していなかった成果などはありましたか?

思っていたよりも、複数回ガチャガチャをやって下さるお客さんが多いです。もちろんスーパーボール自体を複数(別の色が良いなど)欲しがるお子様もいますが、ガチャガチャ自体の体験(つまみを自分で回す、商品がコロコロと落ちてくる等)をもう一度やりたいというお子様が非常に多い印象です。そういった意味では「商品でなく体験を」といううちの狙いとガチャガチャ導入施策はぴったりマッチしたと感じています。

【今後】こちらからお客さんに「気付き」を与えていく

Q:この施策の成果を受けて、今後考えられている展開や打ち手は何かありますか?

今はガチャガチャに関して、こちらからお客さんにプッシュするような事はおこなっていませんので、最後までガチャガチャに気付かずに帰られてしまうお客さんも少なからずいると思います。今後は、お店でやっているイベントや企画の中でスタッフにスーパーボールを持たせてみるなど、こちらからある程度の「気付き」を与えてあげられるような施策は打っていきたいと考えています。

【学び】店舗の中と外での顧客ニーズの違い

Q:この施策を実施した事で何か「学び」があれば教えてください

現在、店舗内と店舗外に2台のガチャガチャを設置しており、それぞれガチャガチャの商品を変えているのですが、店舗外の方に人気アイテムを置いた方が総合的な売上が上がるという事が分かりました。お店の中(出口付近)に置いてあるガチャガチャは、「ガチャガチャをする体験」に興味を示してくれる傾向が強い一方、店舗外の方は中のアイテム自体への興味が強いようです。これは実際に設置してみないと分からない「学び」でした。