「コストゼロのイベント」でファミリー層の付帯売上を増加させた施策事例
おでかけ施設が抱える様々な課題に対して、施設さんが実際におこなった具体的な施策と成果について紹介させて頂く事例紹介。今回の事例は、天然温泉施設「ゆの郷」さんの「経費をかけないイベント」によるファミリー層の付帯売上増加に関する事例となります。今後の貴施設の施策検討の参考にされてみてはいかがでしょうか。
【施設】今回の事例を紹介してくれたおでかけ施設
埼玉県川口市にある、ショーやイベントなど盛りだくさんの天然温泉施設。天然温泉は「美人の湯」と称されるほど泉質は抜群。温泉のほか、リラクゼーション、スパ、フィットネス、レストラン、くつろぎスペースなどもあり、家族でのんびりできる施設です。
【状況】コロナ禍で売上・来館者数ともに激減
Q:まず、今回の施策を実施されるまでの状況について教えてもらえますか?
コロナ禍で売上・来館者数ともにかなり落ち込んでいた状況です。若年層は比較的戻りが早い、ということは聞いていたのですが、当館はシニア層・ファミリー層も多いため、なかなか思うようにお客様が戻ってこず…
また、来館されても「お風呂のみ入って帰る」という方も多く、入館料以外の付帯売上も回復せず、厳しい状況でした。
【課題】顧客満足度の向上には滞在時間・館内周遊の向上が必要
Q:その状況の中で、何を一番の課題として捉えたのでしょうか?
正直なところ、コロナ禍で「外に出ない」選択をしている人たちを動かすのは難しいと思いました。なので、来館してくださった方の満足度を上げていくことを考えました。
顧客満足度は滞在時間に比例することが多いと思いますが、コロナ禍になってからはお風呂のみでお食事をせずに帰ってしまう方が多かったので、まずは飲食のきっかけを作ることに取り組みました。
経費をかけたイベントやキャンペーンであれば、それなりに飲食にも人を集められるとは思いますが、コロナ禍の影響もあり、なるべくコストをかけずにおこなう必要がありました。
【施策】在庫備品を活用した子ども主体のイベントを実施
Q:実施内容について詳細を教えてください。
在庫として置いてあった備品のトイレットペーパーに、子どもの好きなキャラクター等を印刷した紙を巻きつけ、それを縦に積み上げる、というイベントを、飲食を提供しているステージのある宴会場で実施しました。ファミリー層を引き込みたかったので、小さい子どもが主体となって楽しめるものにしたかったんです。
ちなみに、このイベントはトイレットペーパーの在庫を見ているときに思いつきました。「これで何かできないかな」と考えて辿り着いたのがこのイベントです。

Q:今回のイベントを実施するにあたってのコストは0円だったんでしょうか?
トイレットペーパーは在庫だったので、イベント準備にかかったコストは本当に0円でしたね。強いて言えば、トイレットペーパーに巻きつけた紙とその印刷、それを巻きつける作業コストぐらいです。
【工夫】どんな年齢でも公平に楽しめるゲームバランス設定
Q:このイベントを実施するにあたり、工夫したことはありますか?
こういったイベントを実施する上で難しいのが、ゲームバランスだと思うんです。よくあるものであれば、5組ぐらいが同時にスタートして終了時点で一番高く積みあがっている順に1位、2位、、、と順位をつけるなど。ただ、それだとお子様の年齢が高いほうが有利になり、小さいお子様が達成感を得るのは難しいですし、年齢の高いお子様は周りが小さいお子様ばかりだった時におもしろくなくなってしまう。
そういった、「〇歳以上じゃないとクリアできない、楽しめない」という形にはしたくなかったので
・自分の年齢と同じ数を積み上げられたらクリア
・自分の年齢+2つ積み上げられたら景品をゲット
という形のルールで実施しました。
【成果】宴会場は満席、飲食の売上も向上
Q:イベントを実施したことによる、具体的な成果について教えてください。
それまで宴会場の埋まり具合が2割~3割ぐらいだったものが満席になりました。コロナ禍で席数は減らしていたのですが、満席になることは久しぶりでした。宴会場だけでなく、隣接するお食事処のほうにも人が溢れてしまって、急遽ほかの部署からもスタッフを動員して対応しました。
宴会場でもお食事を提供しているので、その分飲食の売上も上がりました。
Q:イベント自体の盛り上がりはどうでしたか?
1回あたり20家族が参加し、イベント自体もすごく盛り上がりました。親御さんやおじいちゃんおばあちゃんが写真を撮っていたり。コロナ禍で子どもたちも「チャレンジをする機会」「家族共同で行った思い出」自体が減っているのもあると思うので、子どもたちが本当に楽しそうにやっていたのが印象的でした。

Q:もともと想定していなかった成果や反省点などはありましたか?
人が集まりすぎてしまった、というのはあります。コロナ禍での参加人数を想定して、スペース等も余裕をもって考えて実施したのですが、想定以上のお客様が集まったため、少し“密気味”になってしまったかな、と感じています。
実際それでクレームが出たわけではないのですが、お客様全員が楽しく、安全にイベントを楽しめるようにするため、次のイベント実施時は事前にご家族ごとの距離をとってもらうように色テープをはり、並んでいない時でも安心して頂けるような見える安全・安心に取り組みました。
【今後】飲食への誘引となるイベントを形を変えて実施
Q:この施策の成果を受けて、今後考えられている展開や打ち手は何かありますか?
この施策で、イベント実施は飲食への誘引のきっかけになることがわかったので、今後も子ども主体のイベントはいろいろな形で実施していきます。
実は既に「こども縁日」のイベントを実施しています。これも同じく宴会場でおこなっていますが、準備するものはほとんど100円ショップで購入できるものだったり、備品を使っているので経費はほぼかかっていません。
トイレットペーパー積みは無料のイベントでしたが、こども縁日は1回券200円・3回券500円で参加いただく有料イベントです。有料にしたことでのイベント参加率に大きな影響もなく、更に気合の入った状態でご家族みんなで参加される方もいらっしゃいます。今のところこちらも大好評で、滞在時間も長くなり館内利用(食事等)も大幅にアップしました。夏休みに向けてさらに人気が出てくるのではないかと思っています。

