目次
▶状況:収益化されていないイベントを長年定期開催し続けていた
▶施策:ルールや景品、進行など、イベント内容や運営方法を刷新
おでかけ施設が抱える様々な課題に対して、施設さんが実際におこなった具体的な施策と成果について紹介させて頂く事例紹介。今回の事例は、天然温泉施設「ゆの郷」さんの「定期開催イベントの内容改善による400%超の収益増加」に関する事例となります。今後の貴施設の施策検討の参考にされてみてはいかがでしょうか。
埼玉県川口市にある、ショーやイベントなど盛りだくさんの天然温泉施設。天然温泉は「美人の湯」と称されるほど泉質は抜群。温泉のほか、リラクゼーション、スパ、フィットネス、レストラン、くつろぎスペースなどもあり、家族でのんびりできる施設です。
Q:まず、今回の施策を実施されるまでの状況について教えてもらえますか?
何年も前から、顧客満足度を上げるために継続開催しているビンゴ大会イベントがあったのですが、景品はお店の招待券やお酒、トイレットペーパー、テッシュBOX、洗剤などで、決して子供が楽しめるようなイベントではなかったんです。ビンゴ大会自体もたくさん販売できていなかったので特に収益化はしておらず、なんとか赤字にはなっていない、気晴らし程度の小さなイベントでした。
Q:その状況の中で、何を一番の課題として捉えたのでしょうか?
会社全体で「ファミリー層の取り込みを」という方針になっていたのですが、ビンゴ大会は景品なども含めて大人向けのイベントで、盛り上がるのも大人ばかりという状況でした。なのでまずは「子供がちゃんと楽しめるものにしたい」と考えました。
また、ビンゴの内容も単純に列が揃ったらOKという、盛り上がる時間も短かいものだったので、もっともっとワクワクするような、長い時間お客様が楽しめるものにしなければと思いました。
Q:実施内容について詳細を教えてください。
まずはビンゴのルールを見直しました。通常、ビンゴって「〇列揃ったら当たりで景品選んでおしまい」みたいなルールですよね。しかし、それだと早々に列が揃った人は前向きな気持ちで楽しめますが、それ以上の楽しさはない。逆に全然穴があかない人は「これはもうだめだ」と諦めてしまい、後半は景品も残り物なので、これまた途中からつまらなくなってしまいます。
そこで、通常のビンゴにはない様々な賞を用意しました。列が揃う揃わないに関わらず、最小の数字を発表するだけでビンゴが揃う(真ん中の「フリー」を含めると最短4つの数字の発表でビンゴになる)❝ ラッキー賞 ❞ や、逆に最後まで当たらなかった人に良い景品がもらえる ❝ アンラッキー賞 ❞ などです。これによってお客様が最後までこのビンゴイベントを楽しめるようになったと思います。
Q:景品も変わったのでしょうか?
子供向けの商品をそろえたコーナーを新設しました。子供向け商品の流行り廃りはとても早いので、お子さんのいるパートさんに話を聞いたり、お子様のお客様に今ほしいものは何かを直接ヒアリングしたり、日々リサーチしています。
また、お客様には常連のお客様もいれば遠方から来られたお客様もいます。例えば、常連のお客様にとっては無料招待券は嬉しいけど、遠方からお越しのお客様は困っちゃいますよね。なので、「〇番目に当たった人はこの商品」と決めるのではなく、いくつかの中から選んでいただけるようにしました。
Q:イベントだとお客様を盛り上げるのも重要だと思いますが、気を付けていることはありますか?
声のトーンを上げて明るく話すのはもちろんですが、何よりお客様とのコミュニケーションを大事にしています。こちらからの一方的なアクションではなく、しっかりキャッチボールができるように心がけています。
お子様に「ちょっと手伝ってー」と声かけてイベント進行を手伝ってもらったりして、「イベントの参加者と開催者」になるのではなく、お客様もこちらも「一緒にイベントを楽しむ人たち」でありたいと思っています。
話し方や間の取り方、セリフなどはテレビショッピングやお笑い、漫談などのレンタルビデオやCDを借りて家や車の中で聴いて勉強しました。
Q:ビンゴイベントの見直しを図る上で、工夫したことはありますか?
参加者が増えると、やっぱりズルをしてしまう人が出てきてしまいます。例えば、当たっていないのに景品を持っていってしまったり、一度に複数の景品を持って行ってしまったり。そういうのを子供が見て、真似するようになってしまうのが心配でとても嫌でした。防止策として、単純に「やめてくださいね」ではなく、「子供に真似させたくない」というニュアンスでビンゴ開催時に毎回注意事項としてお願いしています。
前に常連の方で、そういうズルをしてしまったかもしれない方がいらしたのですが、「やってはいけません」と注意をするのではなく「助けて欲しい。子供たちのためにも ズルしそうな人や、怪しい人がいたら教えてほしい」とお願いをしたら、それから一切ズルをしなくなり、逆に怪しい人を教えてくれるようになったりと、すごく協力的になってくれました。
Q:ビンゴイベントの運営を見直したことによる、具体的な成果について教えてください。
ビンゴカードは現在1枚340円で販売をしています。ビンゴイベント見直し前は年間売上500万円弱だったのですが、見直し後はビンゴの売上が400%を超えました。※コロナ感染拡大前
お子様の参加者も増え、とても賑やかになりました。「子供がゆの郷でビンゴしたいっていうから来ました」と言っていただけるお客様もいたり、もう足腰が弱ってしまっているおばあちゃんの常連様がいらっしゃるのですが、「私の生きがいはビンゴ」と言ってくださっていて、とても嬉しかったです。そのおばあちゃん今は天国に召されましたが、棺の中にビンゴカードとお店の招待券をお花とともに添えました。ご家族みなさん泣いて喜ばれました。
Q:もともと想定していなかった成果などはありましたか?
ビンゴをやるためには席を取らなければならない。そのために早く来館しないといけないので、お食事をされたり、館内の他のリラクゼーションなどを利用するお客様が増えました。
また、「お風呂入らず、ごはんとビンゴだけ」みたいなお客様も増えました。もともと顧客満足度を上げるためのビンゴイベントだったのですが、来場を誘引するコンテンツとして成長できたなと感じています。
Q:この施策の成果を受けて、今後考えられている展開や打ち手は何かありますか?
ビンゴの景品はお菓子や飲み物などの飲食物もあり、今はその場で開けて飲んだり食べたりをOKにしていますが、飲食の売上を考えて今後は「おうちに帰ってから開けてくださいね」という形にすることを検討しています。
また、以前から行っていますが、SDGsの目標の中にある「つかう責任」で食品ロスの削減にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。すでに、お客様も食品ロス削減にご理解頂きながら、参加していただいています。
あとは、お客様のニーズは不変ではないので現状に満足せず、今後もお客様とのコミュニケーションを大事にして、お客様がより楽しめるものを提供していきたいと思っています。