子ども向け学習プログラム配布によりファミリー層の満足度向上に成功した施策事例
おでかけ施設が抱える様々な課題に対して、施設さんが実際におこなった具体的な施策と成果について紹介させて頂く事例紹介。今回の事例は、「星の王子さまミュージアム」さんの「子ども向け学習プログラムの配布によるファミリー層の満足度向上」に関する事例となります。今後の貴施設の施策検討の参考にされてみてはいかがでしょうか。
【施設】今回の事例を紹介してくれたおでかけ施設

星の王子さまミュージアムは、童話『星の王子さま』とその作者サン=テグジュペリをテーマにした、世界で唯一のミュージアムです。四季折々の花咲くヨーロピアン・ガーデンや作者ゆかりのフランス風の街並みなど、園内はどこを撮ってもフォトジェニック。展示ホールでは、作家・飛行家サン=テグジュペリの波乱万丈な生涯をたどり、名作誕生の秘密を知ることができます。
【状況】主な客層は20代女性
Q:まず、今回の施策を実施されるまでの状況について教えてもらえますか?
当施設は、フランス風の街並みがSNS映えするということで、20代女性のお客様を中心に、ご来園いただいております。『星の王子さま』という「童話」をテーマにした施設としては、子ども連れのお客様が比較的少ない状況でした。
【課題】子どもが楽しめる要素が少ない
Q:その状況の中で、何を一番の課題として捉えたのでしょうか?
『星の王子さま』は、大人が読んでも大切な気付きを与えてくれる童話です。しかし、子どものときの感受性は子どものときにしかありません。子どものときに読んで、そしてその子どもが大人になって読み返すことで、その「変化」に気付くことができます。そうやって、親から子、子から孫へと読み継がれていき、世代を超えて愛される作品・施設になるのが理想でした。しかし、実際の展示内容は比較的大人向けで、子どもが『星の王子さま』を楽しく学べる要素が少ないことが課題と感じていました。
【施策】子ども向け学習プログラムの配布
Q:今回、実施された施策内容について詳細を教えてください。
子ども向けの学習プログラムを作成し、2020年7月から、入園される小中学生への無料配布を開始しました。『星の王子さま』の物語に沿って、施設内をまわりながら答えを書き込んでいける小冊子です。

新型コロナウイルス感染症の影響で臨時休園となり、多くのスタッフがテレワークとなった際に、営業再開後~夏休み前に学習プログラムの配布を開始できるように準備を進めました。
【工夫】「答え」ではなく「気付き」を与えたい
Q:この施策を実施するにあたり、工夫したことはありますか?
施設をまわって確認していけば答えを埋められるような単純なクイズ形式の問題だけでなく、「自分だったらどうするか」を考えるような内容も入れています。『星の王子さま』は「気付き」を与えてくれる物語なので、この学習プログラムも同じく「気付き」を与えられるようなものにしたいと考えました。
一方で、子どもたちが学習プログラムに夢中になることで、ほかのお客様にご迷惑が掛かってしまうような事態は避けなければなりませんでした。そこで、学習プログラムを開いた最初のページには「走らない、大きな声で話さない」といった内容の、「ミュージアムで楽しくすごすための4つの約束」を入れました。
【成果】子ども連れのお客様の満足度が向上
Q:この施策を実施したことによる、具体的な成果について教えてください。
コロナ禍が続いているため、現時点でこの施策の成果を具体的な数値等で測ることは難しいのですが、お客様へのアンケート(紙媒体)の中で、「よかった」「楽しかった」「(大人も一緒に)夢中になった」などという反応をいただいております。
また、子どもたちが学習プログラムを広げながら楽しそうに園内をまわっている声がよく聞こえるようになり、子ども連れのお客様の満足度が上がっていることを実感しています。
そして、スタッフが学習プログラムをしている子どもと触れ合ったり、大人では考えつかないような感受性豊かな解答を見せてもらったりすることで、モチベーションの向上や新たな「気付き」を得るといった副産物もありました。
【今後】都度ニーズに合った施策を検討
Q:今後考えられている展開や打ち手は何かありますか?
学習プログラムについては、今後も継続的に配布していきたいと思います。配布を続けていくなかで、お客様の声や園内をまわられているお客様の様子を参考にして、随時バージョンアップしていきたいと思っています。
童話『星の王子さま』は、1943年の出版以来、世界300を超える国と地域の言語に翻訳され、愛され続けています。今回は、子ども向けの施策でしたが、『星の王子さま』のように世代も国境も超えて愛されるように施策を講じていきたいと思います。