ポイント
▶6割が「ワーケーション」という言葉を認知しているが、その半数は意味を知らず
▶「ワーケーション」とはリモートワークの延長のような休暇の取り方のことという認識
▶ワーケーションを体験したことがある人は少数、リモートワーク的な体験が多い
▶半数以上がワーケーションへの興味あり、女性の方がより興味が高い傾向
「ワーク」と「バケーション」を組みあわせた、新しい休暇の取り方である「ワーケーション」。最近ニュースや旅行の記事などでその言葉を耳にする機会が増えてきました。
一方で、具体的な内容はよくわからない、体験したことはないという声も聞きます。
そこで、高知大学地域協働学部といこーよ総研の共同研究として、ワーケーションがどの程度認知されているのか、ワーケーションへの興味はどの程度なのかなどについて家族を対象に調査、分析を実施しました。
(ワーケーションについてのレポート後編である「親子ワーケーション」についての調査結果はこちら)
▶6割が「ワーケーション」という言葉を認知しているが、その半数は意味を知らず
▶「ワーケーション」とはリモートワークの延長のような休暇の取り方のことという認識
▶ワーケーションを体験したことがある人は少数、リモートワーク的な体験が多い
▶半数以上がワーケーションへの興味あり、女性の方がより興味が高い傾向
まず、ワーケーションという言葉がどの程度認知されているかについて聞きました。「『ワーケーション』という言葉を聞いたことがありますか」という聞き方で質問しています。
「聞いたことがある」の合計は6割程度となっており、広く「ワーケーション」という言葉が浸透しているとは言い切れませんが、半数以上は「ワーケーション」という言葉を知っていることがわかりました。
内訳としては、「聞いたことがあり、意味も知っている」という人が31%、「聞いたことはあるが、意味は知らない」が27%で、聞いたことがあると回答している人のうち約半数は意味までは知らないという状況でした。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
ワーケーションの認知を男女別で比較すると、男性は「聞いたことがあり、意味も知っている」が44%いるのに対し、女性はその約半分の21%となっており、女性の認知度の方が低いことがわかりました。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
昨年4月にワーケーションの認知について聞いた調査結果と比較したグラフが以下です。
「聞いたことがあり、意味も知っている」という割合が若干増加し、「聞いたことがない」がやや減少している傾向はありますが、1年しか経過していないこともあり、それほど大きく認知が拡大している様子は見られません。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
ワーケーションについて聞いたことがないという人も含めてワーケーションの様々な定義を選択肢として提示し、その中で聞いたことがあるものを選んでもらった結果が以下のグラフです。(※選択肢は、一般社団法人日本ワーケーション協会、一般社団法人日本テレワーク協会、観光庁などのワーケーションの定義を参考に作成しています。)
それによると、ワーケーションの定義として認知が高かったのは「旅行先や帰省先で、休暇を楽しみつつリモートで仕事をしたり、オンラインで会議に参加するワークスタイル」や「サテライトオフィスやコワーキングスぺースなどを利用したリモートワーク」などで、リモートワークの延長のようなワークスタイルを「ワーケーション」と認識している人が多いという結果になりました。
反対に、ワーケーションと聞いて、現地の自治体や地域関係者と交流したり、グループで何かを体験したりすることを「ワーケーション」であると認識している人は少数でした。
一方、定義を聞いても「ワーケーションについて聞いたことがない」と回答している人が44%いました。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
「ワーケーションについて聞いたことがある説明」の結果を男女別でみると、どの定義についても男性よりも女性の認知が低くなっています。
しかし、「企業などが、オフィスの地方移転促進の一環として、地方に住んで働く機会を従業員に提供すること」、「自治体などが移住・定住を促進するため、地方に住んで働く機会を提供すること」など、移住に関するワーケーション体験については女性の認知が高いことが注目されます。転勤、移住の際は、女性の方が子育てを含む生活全般で地域との繋がりが強くなる傾向があることから、女性の方が移住に関するワーケーション体験に興味関心が高いのではないかと推測されます。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
ワーケーションを実際に体験したことがあるかどうかを聞いた結果がこちらです。
「体験したことがある」という人は14%と少数、ほとんどの人は「体験したことがない」と回答しています。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
ワーケーションを体験したことがある人に、どのようなワーケーションを体験したかを聞いた結果が以下です。「サテライトオフィスやコワーキングスペースなどを利用したサテライトオフィス型ワーケーション」と「旅行先や帰省先で、休暇を楽しみつつリモートで仕事をしたり、オンラインで会議に参加する休暇活用・促進型ワーケーション」の二つが多く、ワーケーションの認知を聞いた質問で上位にあがっていたものと同様のものが体験したことがあるものとしても上位にあがっています。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
体験したことのある人もない人も含めて、ワーケーションに興味があるかを聞きました。約半数の53%の人が「興味がある」と回答しています。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
男女別でみると、女性の方がワーケーションへの興味度が高くなっています。
男性の方がワーケーションの認知が高かったにも関わらず、定義を提示後に興味の有無を改めて聞くと女性の方がより興味を示しており、女性にはワーケーションの内容を知ってもらうことで興味関心を喚起することができるのではないかと思われます。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
実際にワーケーションを体験してみたいかを聞いた結果がこちらです。
それによると「体験してみたいと思う」と回答している人は6割となりました。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
男女別で見ると、興味を聞いた質問と同じく女性の方が「体験してみたいと思う」の割合が多く、より女性の方がワーケーションに意欲的な姿勢を見せています。
出典:高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査
ワーケーションを「聞いたことがある」の合計は6割程度、そのうち半数は聞いたことはあっても意味は知らないと回答しています。約1年前の2021年4月に聞いたワーケーションの認知の結果と比較しても、聞いたことがあるという人が少し増加している傾向はありつつも、大きく認知拡大するまでには至っていない状況です。
ワーケーションのいくつかの定義を提示し知っているものをあげてもらった結果では、リモートワークの延長のようなワークスタイルを「ワーケーション」と認識している人が多くいました。一方で現地の自治体や地域関係者と交流したり、グループで何かを体験したりするスタイルを「ワーケーション」の一つであると認識している人は少数でした。
ワーケーションを体験したことがある人は14%と少数で、体験した内容もリモートワーク的な体験がほとんどでした。
ワーケーションに興味があったり今後体験したいという意向のある人は全体の半数超で、ニーズは低くないと言えます。
ワーケーションに関する認知や興味内容では、男女でも差が見られます。男性はワーケーション自体の認知は高いのですが、ワーケーションの定義などの説明をした上で改めて興味や体験意向を聞くと女性の方が興味を示す傾向があります。
また、ワーケーション全般についても親子ワーケーションについても、女性は男性より移住体験や地域の人との交流をする体験に関心があるのも特徴です。これは、女性の方が子育てを含む生活全般で地域との繋がりが強くなる傾向があることが背景にあるのではと推測されます。
※親子ワーケーションについて調査・分析した「親子ワーケーション調査レポート」も合わせてご覧ください。
■高知大学・いこーよ総研 家族のワーケーションに関するアンケートの調査概要
調査方法/インターネットアンケート
調査地域/全国
調査対象/0歳~18歳までの子どもがいる家族の親
調査期間/2023年1月12日~2月13日
サンプル数/全体306サンプル
調査分析/高知大学地域協働学部・いこーよ総研
※本調査は日本学術振興会科学研究費 JP22H03853「双方向ラーニング・ワーケーションによる地域活性化の実証的研究」の助成を受けたものです。