ポイント
▶まとめ
秋の行楽シーズンとなり、街中や観光地では訪日客の姿が多く見られます。前回につづき、現在訪日客はどの程度か、また注目される中国の訪日客は回復しているのか、今夏の日本からの出国者の状況はどうだったかなどをまとめました。
(前回のインバウンドについてのレポート記事はこちら)
まずは訪日外客数の推移を見てみましょう。(訪日外客数とは、日本を訪れた外国人旅行者数のことで、法務省集計による出入国管理統計に基づき日本政府観光局が独自に算出しています。詳しくは日本政府観光局のサイトを参照ください)
以下は、2019年1月から2023年9月までの訪日外客数をいこーよ総研がグラフにしたものです。
今年の5月から7月にかけて急増した訪日客ですが、8月から9月にかけてその伸び率は少し鈍化したものの、増加傾向は今もなお続いています。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
注:2023年7月以前の数値は訪日外客数のうち観光客数で作成
2023年8月以降は訪日外客数総数の推計値で作成
つぎのグラフは、2022年~2023年の訪日外客数を2019年の同月と比べた割合をグラフにしたものです。
今年の春の行楽シーズン以降、訪日客は2019年比の6割以上まで戻ってきており、順調な回復を見せています。夏になりその推移はさらに高まり、9月には2019年比の96%というレベルにまで回復しています。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
注:2023年7月以前の数値は訪日外客数のうち観光客数で作成
2023年8月以降は訪日外客数総数の推計値で作成
2023年1月以降は2022年の同月ではなく2019年の同月と比較
次に、国別の訪日外客数の推移を見てみましょう。
2022年8月からの1年間、月ごとにどの程度訪日外客数が変化しているかを見ていきます。
2022年9月以降大きく伸びていた韓国の訪日客ですが、今年の7月をピークに9月にかけては横ばい傾向が続いています。2番目に訪日客が多い台湾も同様の傾向です。
続いて、注目の中国について見てみましょう。中国での厳しい出入国規制や日本での対中国の水際対策などにより、中国からの訪日客も長期にわたり低迷していましたが、8月10日に中国政府が日本への団体旅行を解禁し、いよいよ中国からの訪日客が加速度的に増加することが予想されました。ところが、福島の処理水に対する中国政府側の対応が回復途中であった訪日客にも影響。5月から7月にかけて急増していた訪日客の勢いに水を差す結果となりました。
今後もしばらくは勢いの鈍化がみられると思われますが、中国ではもともと日本への観光意欲が高いため、時間の経過とともにその影響も一時的なものになると推測されます。
現に、10月初めの中国の大型連休(国慶節)には、北京初東京行きの飛行機はほぼ満席という報道もありました。冬以降くらいから中国の訪日客も再び少しずつ増加するのではと予想されます。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
続いて、出国日本人数を見ていきます。(出国日本人数とは、海外に渡航した日本人の数です。 当該月の翌月に、法務省の出入国管理統計からJNTOが独自に算出し、訪日外客数と併せて発表しています。詳しくは日本政府観光局のサイトを参照ください)
以下は、2019年1月から2023年9月までの出国日本人数をいこーよ総研がグラフにしたものです。
激減していた出国日本人数も夏にかけて少しずつ増え、今年の8月には増加し、ようやく120万人を超えました。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
注:2023年9月は出国日本人数の推計値で作成
以下は、2019年の同月と比較した割合のグラフです。
8月でも2019年比の6割弱でコロナ前と比べて「回復している」とはまだ言い難い状況です。止まらない物価高や円安が、海外旅行に二の足を踏んでいる一つの要因と思われます。
以前調査した海外旅行についてのユーザーアンケート結果では、行きたい時期は「2023年8月」が最も多く、10月から12月にかけてもその意向は少なからず見られました。年末年始にかけ、出国日本人数がどう変化していくかを引き続き注目していきます。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
注:2023年1月以降は2022年の同月ではなく2019年の同月と比較
2023年9月は出国日本人数の推計値で作成
訪日外客数は順調に増加の一途をたどっており、今年の9月には2019年比の96%のレベルにまで回復していました。
国別の訪日外客数を見ると、前回と変わらず韓国、次いで台湾が続いています。しかしその推移の伸び率は鈍化の傾向を見せています。
中国からの訪日客は、5月から7月にかけて急増。8月10日に日本への団体旅行を解禁し、加速度的に訪日客が増加すると思われましたが、福島の処理水による中国政府の対応が日本への観光客数にも大きな影響をもたらしました。しかし、10月初めの国慶節では訪日客も賑わいを見せるなど、高い訪日意欲の様子も見られ、時間の経過とともにその影響は薄れていくと思われます。今後も中国からの訪日客については注視していきたいと思います。
出国日本人数については、増加してきているものの2019年比の6割弱にとどまり、完全には回復しきれていません。これは、物価高や円安の影響などが大きいと考えられます。
秋の行楽シーズンも真っ盛り。冬にかけて、今後もインバウンドやアウトバウンドなどの状況を含め、お出かけ市場の動向を注視していきたいと思います。