ポイント
▶米国からの訪日客が急増、昨年はほぼ皆無に近かった中国からの観光客も春以降徐々に増加
▶日本からの出国者数はコロナ前の3割程度にとどまり、回復はこれから
▶まとめ
新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行し、街中では訪日客もにぎわいを見せています。そこで前回につづき現在コロナ前と比べて訪日客がどの程度戻ってきているのか、また国別の訪日客の数の状況、さらに日本からの出国者の状況などについてまとめました。
(前回のインバウンドについてのレポート記事はこちら)
まずは訪日外客数の推移を見てみましょう。(訪日外客数とは、日本を訪れた外国人旅行者数のことで、法務省集計による出⼊国管理統計に基づき日本政府観光局が独自に算出しています。詳しくは日本政府観光局のサイトを参照ください)
以下は、2019年1月から2023年3月までの訪日外客数をいこーよ総研がグラフにしたものです。
2019年には毎月200~300万人程度の訪日外客が日本を訪問していましたが、コロナの影響で2020年以降激減しました。その後「ウィズコロナ」となり昨年の9月に日本政府の水際対策が緩和された後は、急激に増加しています。そして2023年に入り、その推移はとどまることなく上昇し続けています。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
注:2023年2月以前の数値は訪日外客数のうち観光客数で作成
2023年3月以降は訪日外客数総数の推計値で作成
このグラフは、2022年~2023年の訪日外客数を2019年の同月と比べた割合をグラフにしたものです。
2022年9月以前は2019年比0~2%程度でしたが、10月以降急増しています。2023年3月以降は、桜シーズンの訪日需要の高まりやクルーズ船の運航再開等の影響もあり、2019年同月比で70%を超えるレベルにまで回復してきています。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
注:2023年2月以前の数値は訪日外客数のうち観光客数で作成
2023年3月以降は訪日外客数総数の推計値で作成
2023年3月以降は2022年の同月ではなく2019年の同月と比較
次に、国別の訪日外客数の推移を見てみましょう。
月ごとにどの程度訪日外客数が変化しているかを見ていきます。
2022年9月以降、韓国の訪日外客数が大きく伸びています。2023年に入っても韓国からの訪日外客数が最多となってはいますが、昨年末に比べるとその推移の伸び率は落ち着いてきています。次いで台湾からは、2022年秋以降今もなお増加している状況です。
また米国からの訪日外客数は、2023年2月以降大きく増えています。
次にコロナ前に訪日客数が圧倒的最多だった中国についてです。2022年2月以前は引き続き厳しい水際対策が取られておりほぼ増えていない状況でした。しかし中国国内での出入国制限が年初から徐々に緩和されたこともあり、2023年3月から徐々に訪日客も増加してきています。また、新型コロナが5類に引き下げられ日本での水際対策も解除されたことから、今後中国からの訪日客は急速に増加するのではと予想されます。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
続いて、出国日本人数を見ていきます。(出国日本人数とは、海外に渡航した日本人の数です。 当該月の翌月に、法務省の出入国管理統計からJNTOが独自に算出し、訪日外客数と併せて発表しています。詳しくは日本政府観光局のサイトを参照ください)
以下は、2019年1月から2023年3月までの出国日本人数をいこーよ総研がグラフにしたものです。
コロナ以降出国日本人数は激減しました 。2022年の夏以降少しずつ増えてきているものの、2023年4月現在で60万人弱と「回復している」とはまだまだ言い難い状況です。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
注:2023年4月以降は出国日本人数の推計値で作成
以下は、2019年の同月と比較した割合のグラフです。2023年に入っても、3割程度と低い水準を示しています。
出典:日本政府観光局(JNTO)発表のデータをもとにいこーよ総研でグラフ作成
注:2023年3月以降は2022年の同月ではなく2019年の同月と比較
2023年4月以降は出国日本人数の推計値で作成
訪日客はコロナ前の70%まで回復し、インバウンド需要は好調と言えます。春の桜シーズンで訪日需要が高まり、米国からの訪日客が増加したことも回復要因の一つと言えるでしょう。
また、中国の訪日も水際対策が緩和されたことにより、これから急激に高まっていくことが予想されます。
一方で出国客数に関しては、コロナ前の2019年比で3割程度となり、回復はまだまだと言えます。しかしながら、GWには海外に渡航する日本人観光客の様子も多く見られるなど、出国客数は徐々に増加しています。
新型コロナが5類に引き下げられ、初めての「アフターコロナ」の夏がやってきます。今後もインバウンドやアウトバウンドなどの状況を含め、お出かけ市場の動向を注視していきたいと思います。