少子化や教員の働き方改革といった学校を取り巻く課題により、学校ごとの部活動や生徒会活動は縮小されることがあります。そのような状況の中で学校、自治体、地域と連携し、高校生が多様な学びを得られるような新しい放課後活動の提案を行っているプロジェクト「高校生YUMEプロジェクト」について紹介します。
高校生YUMEプロジェクトとは
高校生YUMEプロジェクトは、埼玉県狭山市内に存在する複数の高等学校が学校の枠を超えて同じ目的意識を持ち、地域住民や団体と関わりながら継続的に活動し続ける狭山市社会福祉協議会(以下、狭山市社協)の取り組みで、開始当初の2021年度から2024年度までに狭山市内の高等学校4 校と、市内在住で個人的に参加している生徒の合計150名を超える生徒が参加しています。
いこーよ 子どもの未来と生きる力研究所の石川大晃研究員、早稲田大学教育・総合科学学術院教育学研究科の野口穂高教授、鳥取大学地域学部地域学科人間形成コースの田中大介准教授の研究グループが、狭山市社会福祉協議会主催「高校生YUMEプロジェクト」を生徒会活動・部活動との連動も視野に入れた新しい高校生の放課後活動として提案しました。
具体的には、以下の3つの活動(プロジェクト)を行いました。
- 市内の公園等にある⽼朽化したベンチを対象地域の⾼齢者と関わりながら綺麗に作りかえる活動を実施した「ベンチプロジェクト」
- ある⽣徒の実体験をきっかけに,認知症予防のカードゲームをゼロから創作した「ゲームプロジェクト」
- 地域のPRや地域活性化等も⽬指し,狭⼭市内を舞台にした映画の台本・作成を⾏って映画を製作した「映画プロジェクト」
市内の高等学校の3校の高校生が参加。高齢者の認知症予防を期待したカードゲームを、自分たちでルール設計から考案し、地域の方々の協力を得ながら完成させました。
「狭山市社協」、「地域住民・組織」、「学校」の三者にとってメリット
高校生YUMEプロジェクトは、主催として実施する「狭山市社協」、狭山市社協の声がけにより関わる「地域住民・組織」、これらの枠組みの中で活動する「学校(生徒・教員)」の3つの立場にとってメリットがあります。
🔳狭山市社協にとってのメリット
本プロジェクトにより、従来の事業対象では関わりが薄い市内の高校生と連携することができ、世代の地域活動・ 福祉の担い手の育成にも一定の成果が出た
🔳地域住民・組織にとってのメリット
地域住民や組織が、高校生の夢を応援し、高校生が自己実現する姿を我がことのように喜んでおり、地域活性の一助となった
🔳学校にとってのメリット
他校の生徒との交流や地域社会との交流の中で、生徒たちは単一の学校のなかで完結する活動では得られないような活動の広がりや深い学びを得た
また、この取り組みにより、負担過多が問題視されている教員の課外活動の負担軽減にもつながった(学校以外の組織がこの負担を肩代わりするというアイデアに価値がある)
近所のベンチが腐っているという高校生の気づきをきっかけに、市内の工業高校や普通科高校等3校の高校生が協力。地域の高齢者や工務店の方々と力を合わせてベンチを修復しました。
中学・高等学校の部活動の地域移行に向けた新しい実施の在り方として期待
学校と地域の連携の先行事例としては、教育改革の流れの中で提案された「コミュニティ・スクール」の枠組みがあり、学校運営協議会制度として定着しつつあります。これは、学校が主体となり、地域との連携・協働を模索する取り組みです。
一方、このプロジェクトは地域社会側が主体となり、学校の関わり方を模索する取り組みといえます。具体的には、地域社会が主体となる事で、生徒にとっては地域にある部活動のような感覚で参加ができ、放課後の過ごし方がより豊かになります。また、地域福祉の担い手の高齢化が進む現在の地域社会において地域の担い手の育成にもつながります。
更に、前述のとおり、昨今の「少子化」「教員の働き方改革」などにより学校単体での部活動や生徒会活動が縮小される中、高校生YUMEプロジェクトのような取り組みは、生徒にとって多様な学びを保証できる特別活動の一環であり、地域活性化へ寄与する取り組みとしても位置づけられるのではないでしょうか。
どのような活動をしようかみんなで集まり話し合っている様子
まとめ
これまで高等学校における生徒の学びは、学校を中心に考える傾向がありました。しかし、「高校生YUMEプロジェクト」では、社会の変化を踏まえながら取り組みを分析・考察・モデル化を進めることで、地域社会を基点とした学校間連携や学校と地域社会の協働を促す方法を模索しました。また、その重要性を浮き彫りにしつつ、具体的な取り組みを提案できたと考えられます。
今後は、「狭山市社協」、「地域住民・組織」、「学校」それぞれの立場に立ちながら、より詳細な調査・研究をしていきます。
なお、本研究成果は、2024年12月20日(金)公開の「地域学論集 : 鳥取大学地域学部紀要」に掲載されました。